我家の息子くんは、ほんとうに重い症状の発達障がいの特性の子でした。
とにかく、過敏なんです。
味覚も過敏だから、食べれるものが極端に少ない。
野菜は、まったくと言っていいほど食べれなかったし、海苔巻きだけとか、肉のみとか、とにかく偏食の極みでした。
音にもものすごく過敏だから、テレビの音量も9くらいのほぼ聞こえない程度じゃないとうるさいと言う。
大勢のいる場所がうるさすぎて、パニックを起こしていました。
いっぺんに音が同じ大きさで入ってきてしまうために、学校なんて行けるはずのない子でした。
でも、一番、母がいろんな事をしてもだめで、そして、いろんな人に注意を受けたり、ひどい母親だとか、しつけがなっていないと言われ続けたことがありました。
それは、服でした。
締め付けるものが着られないんです。
ボタンやファスナーがついているものが着れないんです。
やわらかい素材じゃないと着れないんです。
季節に関係なく、薄着じゃないといられないんです。
気に入った服ばかりを着続けるんです。
どんなにさむくても、靴下を履けないんです。
だから、いつもいつも回りの教育関係者や、きちんとさせたい人たちからは、ひどい親だとかしつけがなってないと言われ続けました。
でもね、でもね、無理なんですよ。どんなに叱ったって、どんなに悲しんだって、着れない物は着れないんです。
そして、息子くんは、外見は、健常児にしか見えないので、余計に親が悪いとしか見てもらえませんでした。
息子くんは、でも、ゆっくりだけど、年齢が上がるとともに、いろんな事がだんだん鈍くなってきて、少しずつ楽に過ごせるようになって行きました。
小学校6年生の終わりから外に出れる子どもにかわりました。
それとともに、ジャンバーが着れるようになりました。
中学校に入ると、靴下が履ける子になりました。
そして、中学校3年生になると、学校のブレザーの制服まで着れるようになりました。
でも、それ以外は、ずっとずっとジャージのズボンしかはけませんでした。
高校1年生の4月、奇跡が起きました。
息子くんが、せいさ国際高等学校に入学するので、服が欲しいと言いました。
この15年間で、息子くんから、服を買ってといわれたのは、初めてでした。
また、ジャージかなと思いつつ、ショッピングモールに一緒に行きました。
すると、息子くんが、迷わず、ジーンズを選びました。
母は、見間違いだと思って、思わず尋ねました。
え?それって、ジーンズだよ。はけるの??
息子くんは、当然と言うように、言いました。
「あー、はけるよ。ほら、一般的には、ジーンズでしょ。」
おおおおおおおおおー!!!
もう、裸足で、寒いのにジャンバーも着ないで、どんなところにもジャージを着てしかいられなかった息子くんは、大きくなりました。
高校1年生になり、ジーンズをはいて、肩にはショルダーバックを担いで、どんどん友達と電車で遊びに出かける元気な笑顔の男の子に成長しました。
あれが、家から一歩も小学校6年生まで出れなかった息子くんですよ。
そして、あれが、服もまともに着れないしつけの悪い息子くんですよ。
母は、15年の子育てで一つだけ思う事があります。
大丈夫、発達障がいの子供だって、ゆっくりだけど、成長していくんです。
だから、大丈夫。きっと、元気なら、今は辛くても、先は明るいんだと・・・。
息子くんは、育てづらすぎた子でした。
でも、その分、成長が今まで出会ったどの子よりも面白かったんです。
いろんな事を教えてくれた息子くんに、ありがとうと思う母でした。